全国学力・学習状況調査の問題に、「百分率を求めること」についての問題があります。百分率に関する問題の正答率がどうしたら上がるのだろうか、私なりに考えてみました。
1.「百分率を求めること」の問題について
平成21年度のA問題と平成30年度のA問題に同様の趣旨で出題された問題があります。出題の趣旨は、「百分率を求めることができるかどうかをみる。」とのこと。問題は、以下のようなものです。比較しやすいように表にしてみました。
「小学生」や「子どもたち」、「女子」など文言に多少の違いはありますが、どちらの問題文も同じ文脈ですね。
違いがあるとすれば、平成21年度は「女子の人数の割合は、集まった小学生の人数の何%ですか。」、平成30年度は「小学生の人数は、集まった子どもたちの人数の何%ですか。」と、「割合」という言葉を使っているかいないかでしょうか。
この「割合」という言葉、皆さんはどのようにとらえていますか。お子さんから、「割合って何?」と問われたら、何とお答えされますか。実は、大人でも端的には答えにくい言葉ではないかなと思います。この「割合」についての私の考えは後ほど。それほど「割合」とはあいまいに使われている言葉だと考えます。
2.問題の反応率について
子どもたちがどの解答にどれだけ反応したかは以下の通りです。
全国学力・学習状況調査の報告書などでは、「百分率の意味についての理解」が課題として指摘されています。にもかかわらず、なぜか平成30年度の方が「3 40%」の正答率は低くなっています。課題として挙げられるも、正答率が下がったことも問題ですが、そもそも全体の正答率が6割にも満たないことも問題です。
教師の教え方にも改善の余地があるかもしれませんが、多忙を極める教師はやはり教科書の内容を一生懸命教えようとします。ですので、教師の授業力の改善も必要ですが、教科書の内容の改善充実も必要なのではとも思います。
「1」と解答したお子さんたちは、あと「×100」が必要です。「%」の意味を正しくとらえられるよう教える側の伝え方の工夫が必要であるように思います。「%」の記号は、「100」の「1」を「0」と「0」の間に移動させたような記号です。「全体を100ととらえる」意味付けをお子さんに強調してあげましょう。
「2」と解答したお子さんは、 全国学力・学習状況調査の報告書では「基準量と比較量を正しくとらえることができない」お子さんと評価されています。私は、「割り算は大きい数を小さい数で割ると考える」「小数で表すことに抵抗を感じる」お子さんたちではないかと思います。確かに大きい数を小さい数で割る方が計算上も楽なのですが、「割り算」の正しい理解が必要です。
「3」は正答ですね。日本中で8割、いや9割以上にしたいものです。学習指導要領は小学校での理解を求めています。「どの子にも理解できる内容」だと判断されているからこそ、小学校での指導内容だと考えます。正答率が6割を切るということは、指導のどこかに問題があるのです。
「4」と解答したお子さんは、全体が200人でなく100人であったなら正解ですが、200という数字に思考がいたっていませんので、百分率の意味理解は不完全と言わざるをえません。根本的な指導が必要です。
3.「割合」とは
「割合」とは何でしょう。ズバリ答えられる大人は少ないと思います。
私は、ズバリ「割合」とは「比」と「倍」であると考えます。
「比」は「○:□」のように、2つの数の組み合わせで並列にして表したものです。ただ、これは「連比」と呼ばれる「○:□:△:・・・」の一部なので、「連比」こそが「比」と言えるのかもしれません。
「倍」については、実は3つの意味があります。「操作の倍」「関係の倍」そして「分布の倍」です。
教科書でこの3つを分けて指導されることはあまりないように思います。もっともっと系統的に指導したらよいのにと思います。教科書に「倍」の単元はありません。小学校2年生から「倍」は出てきますが、算数の指導に都合よく使えるように出てきます。きちんと定義されることなく、便利に使われます。お子さんたちは日常の経験をもとにあいまいなイメージのまま、なんとなくわかった感じのまま6年間の算数を終えるような気がします。日常の経験が理解の差ともなっているようにも思います。「倍」の単元を設定して、丁寧に3つの意味理解を深める必要があります。
今回の百分率の問題は、「分布の倍」が根底にあると考えます。倍を理解してこその百分率だと思うのです。今後、このブログにてまとめていき、発信していきたいと考えますので、よろしくお願いします。