では、いよいよ繰り上がりや繰り下がりのある計算の指導について確認していきましょう。まずは、繰り上がりのある1桁どうしのたし算です。
1.教科書では
「10の補数」を考えて片方の数を分解してから、「10のまとまり」をつくって計算する方法です。
例えば、「9+3」の場合は・・・
9+3=9+1+2=13
という方法です。9は被加数(たされる数)、3は加数(たす数)ですから、今の場合は「加数分解」と言われます。また、小学校低学年では、「=」でつなげて計算を進めていくことはあまりないようですので、次のような図を用います。
3の下に、2本線が伸びて「1」と「2」に分けています。果物のさくらんぼの形に似ているので、よく「さくらんぼ算」などと言われています。被加数の「9」をみて、「10の補数」を考えるのです。
もし、「7+4」でしたら、「7」はあと「3」で「10」になりますから、「4」を「3」と「1」に分ける・・・という方法になります。
習熟の遅いお子さんについては、理解に時間がかかる方法かもしれません。また、数えたしから抜け出せないお子さんがいるかもしれません。
教科書では、この時点では筆算は使いませんので、繰り上がりがあるといっても、「十進位取り記数法」のうち、「位取り」の理解は深まりにくいかもしれません。
上記のように、いくつか問題点を抱えていると考えます。
2.水道方式では
1桁の数を「5のかんづめ」を使って表現しましたから、数に「5」があるかないかで型分けをしていきます。「5-2進法」(ご・に・しんほう)と言います。
代表的なのは、例えば…
8+6=(5+3)+(5+1)=(5+5)+(3+1)=10+4=14
という方法です。
横書きの計算では複雑そうに見えますが、「さくらんぼ算」にしてみると「5といくつ」に分けて考えることがポイントです。この型については、お子さんはすぐに理解できると思います。ちょっと難しいのは「7+4」など、片方の数に「5」がない場合です。これらも型分けして練習していきます。
また、この時期に筆算も導入します。筆算は「十進位取り記数法」と結び付きやすいので、1年生からでもどんどん指導すればよいと考えます。
理解が進まないお子さんに、無理やり何度も横書きの計算練習をさせるよりも、「タイル」を取り入れ、「5のかんづめ」があるかないかで「型分け」し、「筆算」も学習していきます。教科書とは違う指導法ですが、授業で取り組む以上に数感覚は豊かになります。授業にやや遅れ気味のお子さんでしたら、大いに効果を発揮します。
また、授業で教えられていないことを教えることに抵抗があるお母さんがいらっしゃるかもしれません。しかし、この新型コロナウイルス感染症の影響で、学校が休校となったときには、文部科学省は自宅で先取りして学習する「先行学習」も推奨していました。授業で、筆算はまだ習っていないなどと考えずに、「先行学習」のつもりでお子さんとともに学び、授業で復習しようぐらいの感覚でよいのではないでしょうか。
3.型分け
では、繰り上がりのある1桁どうしのたし算を型分けしていきましょう。大まかに100マス計算図で確認していきます。全部で45題あります。
次回より、この黄色い部分をより詳しく型分けしてその指導法について確認していきます。