数をいくつといくつにわけるといった「数の合成・分解」についてお話します。
人間は、ばらばらに並んでいるものの数を認識できるのは、数にして4~5までと言われます。それ以上多くなったときに、どのように認識したらよいのでしょうか。子どもたちの数概念とも大きく関わってきます。
1.「5」のまとまりの大切さ
まず、下のAやBのタイルを見て、いくつあるかパッと判断できますか。
きっとAもBも、大人でも数えなくては判断できなかったのではないでしょうか。
では、下のタイルはいかがでしょう。長方形のタイルは、タイルが5個集まったものとします。
今度は、わりと簡単に「7個」と判断できませんでしたか。いったん、バラバラなタイルを5個集めておくことで、数のまとまりの認識が容易になります。
教科書では、「10のまとまり」は大切にされていますが、「5のまとまり」はあまり扱われることはないようです。もし、お子さんが数の認識にお困りのようでしたら、「5個のまとまり」の導入をおすすめします。身のまわりにも、「5」を大切にしています。例えば、お金の「5円」、そろばんの「5玉」、ローマ数字の「Ⅴ」などです。
2.「5」のまとまりの導入
私たちの生活となじみが深いのは、10のまとまりで考える「十進法」です。ですので、教科書では10までの数字で、「いくつといくつ」というように、数の合成・分解をどんどん勉強していきます。
例えば、「9は1と8」「9は2と7」「9は3と6」・・・のようにです。他の数でも行います。そして、最終的に、「10の補数」として子どもたちに暗記させたりしています。
10の補数とは、「1と9」「2と8」「3と7」「4と6」「5と5」「6と4」「7と3」「8と2」「9と1」のように、あわせて10になる数の組み合わせのことです。
数の合成・分解ができれば、その後の計算にも良い影響を与えます。ですが、10までの数の組み合わせを考えたり暗記したりすることは、1年生にとって少しハードルが高いように思います。
そこで、「5」のまとまりを導入して、お子さんの負担を少しでも緩和させてあげましょうということなのです。「5」のまとまりを意識させることで、より数への感覚が豊かになり、計算時の発想力も伸びてきます。下に、「5」のまとまりができるまでを示しました。
これからは、「びんづめ」と「かんづめ」という言葉を使うことにします。教科書では、あまりみかけません。
「びんづめ」のびんは、透き通っているので中味が見えます。一方、「かんづめ」のかんは、中味が見えないので、ラベルを貼って中味を知らせていますね。「びんづめ」は線が見えてタイルがいくつあるか分かる状態です。「かんづめ」は、線は見えませんが、5個のあつまりを約束するので、5個が分かる状態のことです。
方眼紙でも簡単に作れます。今後、「10」や「100」、「1000」を扱うときには、「1㎝×1㎝」の方眼紙を「1」とするのがよいのですが、20程度の数を扱うようでしたら、「2㎝×2㎝」ぐらいの大きさを「1」とするのがよいかもしれません。裏返すと、「びんづめ」になったり「かんづめ」になったりすると教具としてよいかなと思います。
例えば、「9」を、Aの「びんづめ」とBの「かんづめ」にした場合では、Bの「かんづめ」の方が一目で「9」と判断できないでしょうか。一番最初に、人間が判断できるのは「4~5までの数」でしたね。Bは「5+4=9」と判断できませんでしょうか。Aの「びんづめ」の方は1つずつ数える必要性が出てきます。
教科書で勉強するいくつといくつ。2から10までの数の合成・分解を一生懸命学んでいます。しかし、上の例でも分かるように、6~9までの数は「5といくつ」で認識できますので、「5の合成・分解」さえしっかり行えばそれほど困ることもないのではとも考えています。
悩んでいるお子さんがいたら、ぜひ「5のまとまり」で一息つかせてあげてください。