日は、ひき算の3つの意味のうち、「求残」と「求補」についてお話します。
前回も触れましたが、教科書には「求補」に関する小単元がなく、「求残」の中にひっそりと組み込まれています。私は、お子さんのためにも、「求残」と「求補」を分けて指導してはどうでしょう・・・という考えの立場です。
1.「求残」について
「のこりはいくつ」のようなキーワードで示され、操作活動とも結び付きやすいので、子どもたちも理解しやすいようです。「求残」の意味をしっかりと理解させてあげましょう。ひき算の基本となります。「ザ・ひき算!」のイメージです。
「求残」の問題文は、例えば・・・
「岩にカエルが6匹います。2匹泳いでいきました。岩には何匹のカエルが残りましたか。」
「求残」は、実はたし算の「増加」の意味と逆になりますので、右手をちょっとひねって右側へ取り去るイメージです。ちょっとひねるのは不自然かもしれませんが、「増加」の逆の操作を印象付けたかったからです。お子さんと操作をするときには、右手で右側へ取り去れば十分です。左側に残ったカエルの数が答えとなります。
数図ブロックで操作してみます。たいてい数図ブロックは裏返すと違う色になりますので・・・
数図ブロックを裏返すことで取り去る数を意識させます。そして、右手で右側に寄せて取り去ります。これが「ひき算」の基本的な操作活動となります。演算記号は取り去ることを「-(ひく)」という記号で表し、式は「6匹-2匹」と表すことを伝えます。左側の残った数図ブロックの数が答えとなります。「のこりはいくつ?」とお子さんに問うてあげてください。
表裏のないタイルならば、裏返す操作は省略されても大丈夫です。
2.「求補」について
では、「求補」についてです。
例えば、問題文は・・・
「子どもが8人います。女の子は3人います。男の子は何人いますか。」
この問題の難しさは、立式にあります。ひき算でよいのか迷うのです。この頃の子どもたちが頼りとする「のこりは?」のようなキーワードがないこと、取り去る操作を思い浮かべる言葉がないことによります。また、取り扱う数が小さいので、容易に答えが分かってしまうのも一因かもしれません。
たし算の「合併」の逆になります。したがって、操作活動は・・・
女の子3人は分かっているので 、上の写真のように右から3つの数図ブロックのところで両手を入れて両側に分けるイメージです。「合併」の逆を印象付けたかったので、両手ともひねっています。
実際には、右側の女の子の数の分だけ裏返してから両手で離してもよいのかもしれません。
左側の男の子の数を求めるには、やはり女の子の数だけ取り去らねばなりません。この操作活動が入ることから、「求補」も「ひき算」であることを理解してもらいます。操作活動を取り入れず、「どんな式になる?」とお子さんに聞くと、典型的な例は、
「5人+3人=8人 だから 5人」
と答えることです。問題文にひき算を想起させる言葉がありませんし、8は5と3からなるので、5が見えてしまうようです。たしかめ算のたし算ではなく、ひき算になることを操作活動を通して理解してもらう必要があります。
「女の子3人」を取り去りますので、
「8人-3人=5人」
となります。もし、キーワードが必要でしたら、「こっちは3人、あっちは何人?」のような、「あっちは?」がよいと思います。こっちとあっちに分けるイメージですね。このような表現をする方がいらっしゃいましたので、素敵なアイデアだと感じました。
3.三角関係図で表す
今回の2つのひき算「求残」と「求補」を「問題文」「操作活動」「式と答え」の三角関係図で表してまとめてみます。
まず、「求残」は・・・
次に、「求補」は・・・
ここまでのポイントは、「求残」と「求補」を分けて指導すること、「求残」はたし算
増加」の逆、「求補」はたし算の「合併」の逆であることです。また、指導で許されるならば、しばらくは「求残」でひき算の意味理解と計算を進めていき、「求補」は後半
そして次回取り上げる「求差」は1年生の終わり頃がよいのではとも思います。